2016年11月20日

平成28年11月 添え状より

拝啓 今年もあと1カ月あまりとなってまいりました。皆様、如何お過ごしでしょうか。 そろそろ来年の準備をされているという方もいらっしゃるのではないでしょうか。 光陰矢のごとし、と言いますが、月日のたつのは本当にはやいものですね。


 大晦日の「除夜の鐘」の話にはまだ少し早いかもしれませんが、私は先日、妹の嫁ぎ先の寺に4、5日泊まり、その時の大事な仕事が「鐘つき」でした。

寺は、福島県石川町に17ケ所ある寺の一つで、大同元年(806)徳一大師(奈良時代から平安時代前期にかけての法相宗の僧。最澄・空海らと仏教について意見を戦わせた高僧で、徳一大師の法相学上の教理は今日でも仏性論として生きている)により創建されたといわれている古刹。町を一望する小高い山の上にある小さな寺なのですが、鎌倉時代に経や仏像を印刷する木版の台木を版木といい、81枚残されて県の指定重要文化財になっています。このことから、かつてこの寺が盛んに経文を印刷して布教活動をしていたことがしのばれます。また寺の側には薬師堂があり、堂内には鎌倉時代に彫られたとされる阿弥陀如来座像や、本尊薬師如来像などが安置されています。

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今回、寺の何年に一度かの行事で、総本山のある京都の寺に、妹夫婦も64世になる長男(30歳)も、寺中みんなで行くので、私は私の母と二人で、寺の留守番を頼まれた訳です。丁度、会社の決算時期でしたので、盛岡にいるより福島の寺にいる方が籠って仕事ができると思い、たんまり資料を持って泊まり込みで行きました。


そうした中で、私の一番の仕事は毎朝の鐘つきだったのです。 鐘をつくのは550分。これは緊張しましたね。小さな町に鐘の音が響き渡ると思うと、責任があります。 音はどう聞こえるだろう? 鐘の音と音の間はどの位、空けるのが正式なんだろう? 町の人がいつも聞いている鐘の音がだせるだろうか。

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私は朝、その時間になると、鐘つき場前の所定の位置について合掌礼拝し、階段を数段上がった鐘つき場で、ゆっくり厳かな気持ちでつきました。鐘と鐘の間は近くの寺の鐘の音から、どうやら1.2.3・・・19。 当寺で点く鐘の音は9回。間違わないように無心に数をかぞえるのが精いっぱいです。真剣にやりますから 邪心どころか、他のことは考えられない。周囲を孟宗竹に囲まれた荘厳な境内でたった一人、毎朝決まった時間に9回、ゴーーーン。


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鐘と鐘の間の19回を数えている間は、実際は辺りに、今ついた鐘の音が満ち満ちています。私の耳の中は、重く余韻のある音でいっぱい! 鼓膜がわれんばかりです。 梵鐘は、昔から 「アタリ」「オシ」「オクリ」と三つの部分に分けられていて、撞木(しゅもく)が鐘を打撃した直後の音は、ふつう打音と呼ばれ、耳ざわりがなく、グォーンという荘重な響き。この1秒以内で消えるのが「アタリ」。これに続いて約10秒ぐらい続く高い感じの音で、比較的遠方まで届く音が「オシ」。遠音とも呼ばれているそうです。これに続いて30秒から1分ぐらい余韻が強弱(うなり)を伴ってだんだん減衰していく、これが「オクリ」。このうなりの周期は1秒に1回から1/3回ぐらいが適当とされ、うなりが明確に聞こえるのがよいとされ、この「アタリ」「オシ」「オクリ」と3調子そろったのがよい鐘の音とも言われています。


近年、梵鐘の余韻の中に含まれる「1/fゆらぎ (エフぶんのいちゆらぎ)」が心身をリラックスさせることが科学的に証明され、小川のせせらぎや小鳥のさえずりなどと同じく、心を癒す音であることが分かり、鐘の音を聞くとどこか気が休まるのは偶然ではなかったようです。たしかに梵鐘の荘厳な音は、早朝の空気と相まって心にしみわたり、とても清々しい気持ちになりました。


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ちなみに、海外のニューイヤーカウントダウンは日本とは一味違い、派手で華やか。大規模に花火を打ち上げるなど祝賀が催されますが、日本の除夜の鐘だけが、静かに静かに静寂の中にしみわたるように響いて、新年を迎えます。この尊厳な日本独特の習わし、日本っていいなあと、思いますが、皆様はいかがでしょうか。


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さて11月の請求書を同封いたしますのでご確認ください。何かありましたら、お気軽にお問合せください。今年も残り少なくなりましたが心静かに、どんなことも楽しんで、生きている喜びを味わいたいと思っています。ご一緒に年末の行事、そして新年へと向いましょう。お風邪などひきませんようご養生ください。         

                                            敬 具 

平成28年11月8日   総施設長  神原美智子

posted by 施設長 at 06:54| 日記